あずま小学校の6年生の総合学習にて、子どもたちが私の仕事の話が聞きたいということで、金曜日の午前中、課外授業に来てくれました。
この授業の目的は「いろいろな職業の方から、仕事の話や苦労話などを聞いて、子どもたちが自らの目標とする将来像を模索する」というような授業だそうです。
私からの話と、子どもたちから私への質問、そして実際の木の温かさなどを子どもたちに実感してもらいました。
以下、私から子どもたちに伝えた、おもな話です。
「家づくりの仕事、山の役割り、木の良さ」
家を造っている会社を「工務店(こうむてん)」と言い、
家を造っている人を「大工(だいく)」と言います。
私のところは、自分の家で育てた木を伐(き)って、それを製材し加工して、家づくりを行っている、森林(もり)と家づくりをつなげた工務店です。
家を造るには大工さんの他にも、たくさんの人たちが関わり、家づくりを行っています。
・家の材料となる木材を供給する材木屋さん
・家を支えるコンクリートの基礎を造る基礎工事屋さん
・瓦葺き(かわらぶき)や金属葺き(きんぞくぶき)の屋根を葺(ふ)く屋根工事屋さん
・壁塗(かべぬ)りや家の周りのモルタル塗りをする左官屋さん
・ドアや引き戸、ふすま戸を造る建具(たてぐ)屋さん
・電灯やコンセント、テレビやインターホンの配線を行う電気設備屋さん
・台所やお風呂、洗面所などに給水と排水の配管を行う水道設備屋さん
など主な人たちですが、他にも家の材料を提供する建材屋さん・クロス張りやカーペット張りを行う内装屋さん・外壁の壁材を張る外装屋さん・玄関やお風呂のタイル張りを行うタイル屋さん・雨樋(あまとい)や屋根周りの鉄板を付ける板金屋さん、外装の足場(あしば)を組み立てる足場屋さん、内外装の塗装(とそう)を行う塗装屋さん、などと多くの人たちによって家は建てられます。
そして、これらの職人さんたちと、その人たちが使う道具が家づくりには必要ですが、それ以外に大切なものは、設計図であり、この設計図にもと付いて家を建てていきます。
日本の最近の家と昔(50年以前)の家の違いは?
昔(50年以上前)の家は、日本の木、そして土や紙など最後には土や灰となる自然の材料で造られていて、100年以上長持ちする丈夫な家でした。
最近の家は、外国の木や合板、そしてプラスチックや化学物質などが多く使われ、工業製品によって造られていて、25年の短い寿命(じゅみょう)の家です。
他の先進国の家の寿命は50年~100年なのですが、なぜ?日本はそんな短い寿命な家になってしまったのでしょうか。
それは、日本の家というものが、使い捨ての品物と同じようにあつかわれ、大量生産の大量消費の物とされてきたからです。
日本の家は、日本の木を使って造る家が一番良いのです。
なぜなら、その土地の育った木が、その土地の気候風土(きこうふうど)に適した木であり、その地域の木を使うことによって、地域の山の管理が行われることなのです。
しかし、50年ほど前から日本の家づくりが、大量生産する家づくりへと変わって来たため、必要な時に必要な量をそろえることができない日本の木が使われなくなり、さらには、日本が外国に多くの工業製品を輸出する見返りとして、多くの外国の木が輸入されてきた。
その結果として、日本の木が伐られなくなり、山の手入れがされなくなって、山が崩れたり、大水が出たりすることが多くなってきました。
今、「地球温暖化(ちきゅうおんだんか)」ということが問題になっていますね。
では、この「地球温暖化」ということは、一体何が問題なのでしょうか?
人間は「呼吸することや火を燃やすこと」などによって二酸化炭素(CO2)を排出しています。その排出した二酸化炭素は、森林が吸収して炭素を木材の形にして木の幹や枝などの形にして炭素固定(たんそこてい)をしています。
地球温暖化ということが問題になる数十年前までは、人類が排出する二酸化炭素の量と、森林などの自然によって吸収される二酸化炭素の量のバランスは維持(いじ)されてきたのですが、世の中が便利になると共に「工場、自動車や冷暖房」などから排出される二酸化炭素の量が急激に増え、自然界の力では吸収しきれなくなり、温室効果ガスが地球を覆う(おおう)ようになって、地球の温度が上昇してきているのです。
日本ではこの二酸化炭素の排出削減に、省エネなどによって二酸化炭素の排出量を減らすことと、国内の森林を手入れして健全な森林にすることによって、二酸化炭素を森林に吸収させることとしています。
日本の家に日本の木を使うことで、山の手入れがされて「地球温暖化防止」にも役立つということは、分かりましたか?
では次に、日本の木の話ですが、家に使う日本の木の代表的な木と言えば、
杉(スギ) ・・・やわらかくてあたたかく、木目が美しい木。(柱・梁・羽目板)
檜(ヒノキ)・・・丈夫で強度もあり、香りのよい木。(土台・柱・垂木・床板)
そして「木を住まいに使うことの良さ」は、まだたくさんありますよ。
・湿度の多い時は湿気を吸収し、乾燥すると湿気を排出します。(木の調湿効果)
・木は衝撃(しょうげき)を吸収するので、ケガを防止します。
・紫外線(しがいせん)も吸収するので目にもやさしいのです。
・木目(もくめ)の美しさや木の香りによって、気持ちをリラックスさせてくれます。
・厚みのある木は、実は火にも強く、たとえ燃えても有害なガスを出しません。
最後になみなさんへのメッセージを、
私は物を造ることが大好きで、小さい頃から山や木にふれて育ってきました。
その山が荒れて木が使われない、今の日本の林業と家づくりを目の当たりにして私は、「この木を使って家を建て、住む人に喜んでいただければ、木も喜び木を育ててきたご先祖様も喜ぶ」と思い、今の仕事を始めました。
皆さんはこれから先、いろいろな知識を身につけ、いろいろな経験をしていく中で、自分のつくべき職業を見つけ出すことと思います。
それには、普段から自分の好きなこと、得意なことは何かを自覚し、自分に与えられた使命のようなものを見つける努力もしていって下さい。
好きなことは少々つらくても我慢(がまん)もできます。
そして、小さなことでも続けていくことも大切です。
継続(けいぞく)することは、将来きっと大きな力となり、自信にもなります。
皆さん頑張ってください。
2009年1月30日 松島匠建 松島克幸